にらみ鯛とは?
にらみ鯛は、京都のお正月にはおなじみの食べ物です。
しかし、京都以外の方にとっては「にらみ鯛って何?」という感じかもしれません。
にらみ鯛は、京都の郷土料理として古い伝統を持っており、単においしく食べるというだけに留まらず深い意味を持っているのが特徴です。
京都といえば平安京など古い歴史を持つ地域です。寺社も多く観光地として国内、海外問わず高い評価を得ていますが、そうした観光スポット以外にも評価されているのが京都で暮らす人たちの日常生活の中でも残っている伝統です。にらみ鯛はそんな京都ならではの伝統的な料理なのです。
「にらみ鯛」とはユニークな名前ですが、これは「作った後3日間を手をつけず、4日目に食べる」という独特な食べ方からつけられたものです。
つまりせっかく作っても3日間の間は「見るだけ、にらむだけ」というわけです。
どうしてそんな食べ方をするのかは、諸説あり正確にはわからない部分もあるのですが、有力な説は、神仏へのお供えという意味合いです。まず神仏に3日間お供えしたうえで、4日目に食べていたというわけですね。
手に入った食材や料理は、まずは神さま仏さまに感謝の意味をこめてお供えするというわけです。
とくにお正月は一年の始まりの大事な時期。神仏に先に食べてもらうことに大きな意味があったのでしょう。
ただし近年では、にらみ鯛の習慣を続けている地方が少なくなっており、その食べ方にも変化が見られています。
3日間食べないのが一般的ですが、ほかにも2日間食べずに3日後に食べる、さらに1日だけ食べずに2日後に食べる地域もあります。
なぜ正月に鯛を食べるのか
にらみ鯛は、頭から尾まで、1匹丸々の鯛であることが大事だとそれています。
なぜなら「めでたい」とかかっている鯛が欠けているのは縁起が良くないと考えられているためです。同時に神さま、仏さまに捧げるのだから全部そろっていないと失礼にあたるという意味合いもあります。
正月に鯛という理由も「めでたい」だけでなく、神仏に最高の食材を捧げるという意味合いから高級品の鯛が選ばれたと言われています。
鯛が昔の人たちにとって特別な魚だったからこそ、神仏とのつながりを意識できたのでしょうし、お正月に相応しい食べ物だと考えられたのでしょう。
ただ、にらみ鯛に話を戻すと、3日間食べずに「にらみ続ける」わけですから保存が大変です。
冬とはいえ昔は冷蔵庫のような便利なツールはなかったわけですから、鯛が傷まないように気を付ける必要があったわけです。
そんな保存事情が2日後、3日後に食べるといった変化をもたらした理由だと考えられています。
にらみ鯛の作り方
にらみ鯛の調理方法は塩焼きが基本ですが、それは保存方法とも深く関わっています。
昔は食べ物の保存には塩を使うしか方法がなかったため、にらみ鯛の食べ方も塩焼きが一般的でした。
塩焼きは、風味を損ねることなく素材そのもののよさを味わうことができる食べ方としても理想的です。
作る際の注意点は焦げやすいところです。特に焦げやすい頭や尾に塩をたっぷりとつけて焼くのがいいでしょう。
縁起物は見た目も重要なので、焦がしてしまって姿を損ねることがないよう注意が必要です
最近では、にらみ鯛を煮物にして食べるケースもよく見られます。塩で保存しておいた鯛にしっかりと火を通して煮込むことで時間が経過してもおいしく食べることができます。
鯛は荷崩れしにくい点も煮物に適している理由です。
現代では塩焼きよりもこちらの方が調理しやすく、塩焼きよりも味が濃いので適しているとも言われています。
ただ、煮物にする際には味を濃くしないようにするのがポイントです。
もともと京料理は素材のよさを活かすことを重視しているわけですが、良い鯛を使うならなおのこと、あまり手を加えずに鯛そのものを味わうのが理想です。
煮物にするにもあくまで薄味に、出汁、醤油、料理酒で仕上げるのがおすすめです。
そうなると塩焼きよりも作り方が難しいといえるかもしれません。
なお、かつてはお祝いのときには魚に包丁を入れると縁起が悪いといわれてきましたが、現在ではそこまで厳しく守っているところは少ないようです。
このように伝統ある習慣を現在に伝えているにらみ鯛ですが、現在ではスーパーなどで塩焼きを手軽に購入することができるようになりましたし、冷蔵庫に保管するという選択肢もあります。
そのため、昔のやり方に縛られず、気軽ににらみ鯛を正月に楽しむ家庭もあります。
ただ、せっかくの縁起物ですから、お正月の3ヶ日の間は我慢して4日目に食べる、というのも文化を感じられる良い機会です。
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にらみ鯛の美味しい食べ方
縁起物とはいえ、にらみ鯛も4日目ともなるとすっかり冷めて固くなってしまい、そのまま食べるには美味しくありません。
とはいえせっかくの鯛ですから上手に温め直したり、炊き込みご飯にしたりと工夫して美味しくいただきたいものです。
塩焼きにした場合は、美味しく温め直したり、アレンジすることもできます。
以下では、冷めてしまった「にらみ鯛」の美味しい食べ方をご紹介するので参考にしてください。
にらみ鯛の温め直し方
にらみ鯛は温め直すだけでも美味しくなりますが、日本酒を振りかけるとシットリと仕上がります。霧吹きでかけると全体に馴染むのでおすすめです。
レンジで簡単に温める
お酒を振りかけた鯛にラップをかけて500Wで2~3分でふっくら仕上がります。スチーム機能が付いているレンジだとなお良いめしょう。ただし、温めすぎると固くなるので、サイズに応じてこまめに様子をみるようにすると失敗しません。
フライパンで柔らかく温める
お酒を振りかけた鯛をフライパンに入れてフタをして蒸し焼きにするだけでも、しっとりふわふわに仕上がります。
オーブンでパリパリに温める
お酒を振りかけた鯛にアルミホイルをかぶせ、200度に温めたオーブンに投入します。仕上げにアルミを外してから少し熱すると皮がパリパリに仕上がります。スチーム機能が付いたオーブンなら、アルミホイルは必要ないので簡単です。
魚焼きグリルでパリパリに温める
オーブンがなくても魚焼きグリルが付いているコンロならパリパリに仕上がります。お酒を振りかけた鯛をアルミホイルで包んで、あらかじめ熱を入れた魚焼きグリルに投入します。仕上げにアルミホイルの上を開いて少し炙れば、皮がパリパリに仕上げがります。小さいサイズの鯛なら、トースターでも大丈夫です。
にらみ鯛をアレンジ料理にする
鯛めし
簡単で美味しくできる鯛めしはおすすめアレンジです。
まずいつもご飯を炊くのと同じ要領で炊飯器に米をセットし、だし汁を入れて、その上に鯛、細切りの生姜を入れて炊飯します。
炊きあがったら鯛だけ一度取り出し、身をほぐして、ご飯に身を投入して混ぜます。
茶碗に持って、彩りに三つ葉を乗せれば完成です。
少し手間はかかりますが、先に身と骨を分けて鯛の頭と骨で出汁を取ると、より鯛風味が強くなるのでおすすめです。
鯛そぼろ
薄口しょうゆ:酒:みりん:砂糖を2:2:1:1の割合で混ぜて、ほぐした鯛の身を水分がなくなるまで弱火で炒めます。ポロポロしてきたら完成。味付けはもちろん好みでOKです。ご飯に乗せたり、おにぎりの具にしても美味しいです。
鯛茶漬け
ほぐした鯛の身にだし汁をかけるだけなので、とても簡単なアレンジです。鯛の頭、骨から取った出汁をかけるとさらに美味しいです。
塩、ワサビ、ゆず胡椒、三つ葉などお好みで薬味をつけて食べてください。
鯛ふりかけ
鯛の身を乾煎りして水分を飛ばしつつ、粉昆布茶とゴマを入れて完成。大葉や山椒などお好みの具材で味付けしてください。
鯛汁
鯛の骨、頭、水を鍋に入れ、アクを取りながら10分ほど煮込みます。
塩、醤油で味を調えて、鯛の身、大根、ニンジン、豆腐など好きな具材を入れて完成です。
鯛の身は残ったらほぐして冷凍保存でOK
鯛は残ったら、身をほぐして冷凍保存しておけばOKです。
そのまま鯛茶漬け、チャーハン、スープの具材、上で紹介したような料理に使えるのでお手軽です。