あまり読書をしないのもよくないと思い、最近ちょくちょく小説を読んでいます。

5点満点の評価と、読んでみた感想です。

 

蟹工船(小林多喜二)2点

日本に帰れずオホーツク海でカニを取る「蟹工船」での過酷な労働状況を描いた作品です。

特定の主人公はいません。

従業員たちの命より、金儲けを優先する監督。

監督の人を人とも思わない命令や暴力に、怒りがおさまらない従業員たち。

個人主義を否定して共産主義と結びついた文学を「プロレタリア文学」といいますが、「蟹工船」はその代表作のようです。

確かに、難破しかけた小舟をロシア人が助けて「日本は労働者ばかりが死に物狂いで働かされ、その分資産家は威張って儲けていく。応援してるからがんばれ労働者!」と励まされるシーンやなんかがあります。

ラストシーンも確かにそんな感じでした。

 

この日をつかめ(ソールベロー)3点
44歳ウィルヘルムは失業中で、妻とは別居中、老人ばかりが住むホテルで独り暮らし。
貯金が少なくなりつつある中、お金を工面するため、様々に奔走する主人公の苦悩の物語です。
逆境の中でウィルヘルムは、「個人の幸せとは、生きる意味とは」を考えていきます。
序盤は主人公のネガティブ発言ばかりで正直退屈でしたが、中盤から自己啓発本みたいになっていって面白かったです。
ノーベル賞作家の代表作です。

火花(又吉) 3点
売れないお笑い芸人の、笑いと苦悩の物語です。
本職のお笑い芸人だからこそ書けるんだろうなぁというシーンが見どころです。
芥川賞受賞作品ですが、どうも面白いとは思えませんでした。
でも読みやすかったです。

コインロッカーベイビーズ(村上龍)3点
全く別の場所でコインロッカーに捨てられた二人の赤ん坊、キクとハシの成長の物語。
二人の中には自分では抑えられない凶暴性が眠っています。
常に暴力がどこかに隠れていて、落ち着きません。展開が読めずハラハラします。
文章が読みにくいシーンがちょこちょこあって、読み終えるのに苦労しました。
文庫本で600ページありボリューミー、かなり長いので覚悟を決めて読まないといけません。

 

プラチナデータ(東野圭吾)4点
すぐに犯罪者を逮捕できるよう、警察が開発した日本国民のDNAを集めたデータベースを検索し犯罪者の顔と特徴を特定するシステム。
捜査が驚くほど早く進むことが認められ捜査に取り入られますが、ある事件の容疑者だけがまったく検索に引っかかりません。
昔ながらの足を使って捜査する警察官「」、DNA検索システム開発者の「神楽」の二人が中心の物語です。
容疑者を追いかける内に次第に明らかになるシステムの裏側、そして「プラチナデータ」とは。
読みやすくスピード感がある文章で、500ページのボリュームですが、あっと言う間に読み終わります。
嵐の二宮君が主演で映画化もされた作品です。

オレたちバブル入行組(池井戸潤)4点
社会現象にもなった人気テレビドラマ「半沢直樹シリーズ」の原作第一弾です。
半沢直樹は銀行員で、その半沢が課長を務める「融資課」を舞台に繰り広げられる痛快ビジネス小説。
銀行が5億円の融資を取り付けた会社が突如倒産。
半沢は融資課長として債権回収するか責任を取らされるかを迫られます。
銀行内での上司からの圧力、逃げ回る債務者、めげない半沢。
銀行という小さい世界のストーリーながらも、ビジネスマンなら本を読む手が止まらなくなること請け合いです。
金融関係の単語も勉強になります。
名言「~倍返しだ」も必見です。

羊をめぐる冒険(村上春樹)4点
主人公が、不思議な力を持つ耳の女と一緒に、これまた不思議な力を持つ一匹の羊を探しに行く物語。
主人公は羊を一カ月以内に見付けないといけないんですが、常にどこかのんびりしていて、道中ずっと女とイチャイチャしています。
ストーリー自体は正直何が面白いのか、よく分かりません。
分からないんですが、おしゃれな文章というか言い回しというか、ついついクスッと笑ってしまったり、読み進めていく内にいつの間にか不思議な世界に入り込んでしまっていました。
この不思議な文章が村上春樹の魅力なんでしょうか、ハルキニストの気持ちが分かる気がします。

人間失格(太宰治)5点
幼い頃から人間を極端に恐れる主人公、葉蔵。
恐れていることが周囲の人間にバレないよう、葉蔵は常にピエロを演じます。
容姿端麗でユニークな葉蔵は人気者で、女性にもモテてます。
しかし女性との関係、友人との関係で、徐々にその心の闇が私生活を蝕んでいく、という物語です。
古い小説なので、さぞかし読みにくいと思ったら、とんでもなく読みやすかったです。
まるで詩を読んでいるような、読んでいるだけでリズムが楽しいといいますか、なるほどすごい小説家です。
小説自体短めなので、あっと言う間に読めます。
ちなみに太宰治はこの人間失格を最後の作品とし、自殺しています。

斜陽(太宰治)5点
良家の娘が主人公で、その没落していく様がメインストーリーです。
父の他界、弟の出兵で、お金がなくなっていき田舎で母親と二人暮らしをする主人公。
物語には常に物寂しげな雰囲気がただよっています。
最後はつい泣いてしまいました。
始め読み始めは「男性小説家が書く、女性主人公って大丈夫かな」と不安でしたが、
太宰治の読みやすい文章と、心地よいリズムときれいなストーリーであっと言う間に読んでしまいました。
途中の手紙のやりとりのシーンがありますが、人様の日記を盗み見しているような気がして、とても面白かったです。さすが名作です。