意外に多い日本人の対人恐怖症

今や日本人の10人に1人か2人は症状があると言われている「対人恐怖症」。
日本人のように集団行動を重視する社会においては、対人関係に問題が起こると、社会的に生活しづらい状況に陥りやすく、対人恐怖症になるケースが多い傾向にあります。

対人恐怖症は、社会不安障害や対人恐怖、社交不安症とも言われていますが、緊張のあまり人前で思うようにしゃべれなくなったり、赤面したり、他人からの視線が気になってしまったり等の症状で現れる心の悩みです。
多汗症や劣等感等、この他にも様々な症状がありますが、いずれの場合も、「人から変に思われたら…」、「人に嫌われたら…」という、社会における人間関係によって引き起こされる不安が根底にあると言えます。
日常生活の中で、人に気を遣ったり、人目を気にしたりすることは誰にでもあることですが、これが行き過ぎてしまうことが、対人恐怖症に繋がる要因になり得ます。

また、対人恐怖症の症状に悩んでいる人は、自分の性格や思想等に問題があると思い、性格の治し方や心理学関係の本を読んだり、催眠や自己暗示といった民間療法で治そうと試みたりしてしまいがちですが、それでは対人恐怖症の根本的な治療や改善にはなりません。
精神科、神経科、心療内科等を受診しても、社会不安障害や社交不安症、またはうつ病等と診断されてしまい、抗うつ薬や精神安定剤等の薬物療法で治療しようとすることがありますが、これも根本的な解決には繋がらず、逆に薬物に依存してしまい、悪影響を与えてしまう場合もあります。

正しい対人恐怖症の知識を身に付け、あせらずに根本的な解決を目指していきましょう。

 

自分は大丈夫?対人恐怖症チェック

対人恐怖症は、ほとんど自覚していない軽度のものから、自覚しているが故に人と会うことを避けたり、会話をすることを避けたりする重度のものまであります。
特に自覚してなくても、対人恐怖症の初期段階にある人は、早めに発見できればそれだけ症状が軽いうちに改善できますし、重度になる危険性を低くします。
自分なりに、対人恐怖症に繋がるような症状等があると感じるのであれば、これから紹介するチェック項目を活用してみてください。

チェック項目は、「TPOの目的が理解できず、順応することも出来ない」「人付き合いに抵抗や不安を感じる」「来客に対して緊張したり飲み物を出す手が震える」「人から話しかけられると緊張して汗をかく」「人前に出ると赤面しているのを自覚し、それを苦痛に感じる」「空腹時にお腹が鳴るのを恐れて、必ず満腹にしてからじゃないと外出できない」「電話に出た時に緊張で頭が真っ白になる」「電話がなると緊張で動悸が激しくなる」「大勢の人の中にいても自分は孤独だと感じる」「人からの評価やどう思われているのかがとても気になる」「自分の臭いや容姿が人に不快感を与えていないかと不安になる」「外出先で他人も使うトイレを使用するのが苦手」の12項目です。

自分でチェックしてみて、当てはまる項目が多い程、対人恐怖症になる可能性、若しくはすでに軽度の対人恐怖症である可能性があります。
また、当てはまる項目があるということは、少なからず悩みを持っていることになるので、思い込みが激しくなる前にカウンセリングや専門家を受診して悩みを解決するようにしましょう。

 

他人と比較し劣等感を抱くと…

優越感の対義語で、人と比較して自分は劣っていると感じることを「劣等感(コンプレックス)」といいますが、対人恐怖症の症状である赤面症や多汗症等がある場合、この劣等感を強く感じている状態に陥っていると言えます。

人によって劣等感を感じる要素は違い、容姿で言うと、髪の毛が薄かったり、身長が低かったり、性器の大きさや形等で悩み、精神的なところで言うと、口下手だったり、人見知りだったりする等のことで悩み、それを人と比較して劣っていると思うことで、劣等感を強く感じるようになってしまいます。
このようなことから、劣等感は対人恐怖症だけではなく、その他にも心身に悪い影響を与えてしまう要因になると言えます。

特に、神経質で完璧を求める性格の人は、自分自身と他人を比較し、自分に足りないものや欠けているものに気付きやすく、不足している部分を補う為の努力に一生懸命になるあまり、周りを見ることができず、自己中心的な思考に陥りやすいので、劣等感を強く感じやすい傾向にあります。

対人恐怖症ではなくても、人前で緊張して赤面したり、多汗や震えたり等の症状が出た時に、「人から変に思われている」と考えてしまい、周りのことを考える余裕が無くなることは誰にでもありますが、劣等感を強く感じている人は、さらに自分の殻に閉じこもろうとする傾向が出るようです。

劣等感を抱えて悩んでいる人は、自分を大事にし過ぎるあまり、逆に自分を苦しめてしまっているので、心にゆとりを持って、日常生活を送るようにしなければいけないと思います。

 

対人恐怖症になる原因(外的・内的要因)

対人恐怖症になる原因は、過去になんらかの経験をし、それがきっかけとなって過剰に恐怖や不安を感じることから始まります。
その原因には大きく分けて2種類の要因があると考えられています。

まず1つ目が外的要因です。
外的要因は、自分が起こした行動を、他人がからかったりおもしろがったりすることで、恥ずかしいとショックを受け、同じような状況になった時に、ショックを受けた記憶が蘇り、恐怖や不安を感じてしまう事です。
内的要因は、過去に経験した失敗によって、また間違えたり失敗したりしないかと恐れてしまい、間違えや失敗をしないように頑張ることが自分へのプレッシャーとなり、過剰な恐怖や不安、緊張を誘発してしまうことをいいます。

いずれにしても、過去に間違いや失敗を経験したことが対人恐怖症の引き金になっている場合が多く、その間違いや失敗を引きずってしまう性格の人が対人恐怖症になりやすいとも言えます。

対人恐怖症になりやすい性格として、「神経質」「真面目」「完璧主義」「頑固」「感受性が高い」「自意識過剰」「慎重」「内気」「怖がり」「気を遣い過ぎる」「失敗を引きずる」「人見知り」等が挙げられます。
ただ、このような性格の人が、必ずしも対人恐怖症になるという訳ではなく、先に述べた外的要因や内的要因、上記の性格からくる考えや思い込み等の要因も絡んできます。

人によって物事への考え方や捉え方はそれぞれですが、行き過ぎた考えや過剰な思い込みは、知らず知らずのうちに自分を苦しめてしまっている場合があります。
物事を前向きに考えられず、体調に異変が起こり始めていたら対人恐怖症になっている可能性もあるので、思い当たる節や自覚できる程の症状が出てきたら、早めに専門家を受診するようにしましょう。

 

赤面することに不安を抱く赤面恐怖症

学生時代に、授業中突然指名され、同級生の前で発表しなければならない、多くの人が集まる会社の大事な会議でプレゼンに失敗した、飲み会の席で、自分の容姿や性格をバカにされた等の経験をした人は多いと思います。
このような場面に遭遇した時、恥ずかしいという気持ちから顔が赤くなることはよくあることですが、これがきっかけとなり、対人恐怖症の症状の1つである「赤面症(赤面恐怖症)」の症状が現れることがあります。

赤面症は、対人恐怖症の原因の1つである「外的要因」によって引き起こされ、多汗症や視線恐怖と共に、対人恐怖症では特に多く見られる症状です。

人前や、苦手な人、自分にとって大きな影響を与える人に対して、顔全体や頬、耳等が赤くなるのが症状ですが、赤面を恥ずかしいことと感じてしまうことで、より症状がひどくなり赤面症になります。

赤面症の症状が現れる人は、人前で顔が赤くなることで、「人から変に思われていないか」、「相手に好意を持っていると勘違いされていないか」、「見下されていないか」等と、とらわれた考えを持つ状態になっていて、その症状に悩み、赤面する部分を隠す為のメイクをしたり、髪を伸ばしたり、帽子を深くかぶったり、サングラスをしたりすることが多いですが、一時的に楽になっても、解決したことにはなりません。

とらわれた考え方を和らげ、薄れさせることが、根本的な解決へと繋がるので、赤面することは恥ずかしいことではなく、誰にでも起こる生理現象だと思うようにするのも、症状を和らげる1つの方法になるでしょう。

 

考え過ぎて行動できなくなる予期恐怖症

パニック障害の代名詞とも言われる「予期恐怖症(予期不安)」ですが、対人恐怖症でも予期恐怖症は症状として現れます。
予期恐怖症は、まだ起こっていないことに対して抱く恐怖や不安のことで、何かしようとする時に、良くないイメージをしてしまうマイナス思考でいると、恐怖や不安は高まり、精神的に苦しくなるばかりではなく、動悸や息切れ、吐き気や下痢、睡眠障害等といった身体面にも影響を及ぼしてしまいます。

人は誰でも、大小様々な予期恐怖症を感じて生活しています。
例えば、学校でクラス替えが合った時に友達できるかどうか、検定試験で合格できるかどうか、仕事を上手くこなせるかどうか等、人それぞれ日常生活の色々な場面で、まだ起こっていないことに対して恐怖や不安を感じています。
だからこそ、どうすれば上手くいくか考えたり、準備をしたりするのです。
ただ、対人恐怖症で予期恐怖症に陥っている人は、恐怖や不安を感じるから行動しようとせず、ただ、その恐怖や不安を自分の中で増大させて悩み苦しむだけになってしまうところが問題になるところです。

予期恐怖症に陥っている人は、物事の先にある結果に対して、自分が人にどのように思われるのかと考えてしまいがちになります。
そこにマイナス思考が入ってくると、恐怖と不安はさらに増大し、行動に移せなくなり、精神的に辛くなってしまいます。

人からどう思われるのか考えないようにして、マイナス思考をプラス思考に変えないと、予期恐怖症だけではなく、対人恐怖症を克服するのは難しいでしょう。

 

字を書くことで異常に緊張してしまう書痙

「書痙(しょけい)」とは、冠婚葬祭で記帳したり、提出書類にサインを書いたり、ホテルのチェックイン時にサインを書いたり等、人前で字を書く時に、極度に手が震える症状のことを言い、対人恐怖症の1つとされています。

人付き合いに関しては特に症状が出ず、字を書く時にだけ症状が現れる場合もあり、他の対人恐怖症の症状と比べると特殊な部類になります。
また、元々字があまりキレイではない人より、むしろ字がキレイな人の方が書痙に悩むことが多い傾向にあるようです。
字がキレイな人は、人前で字を書く機会が多く、下手な字を書いてはいけないというプレッシャーを感じることによって書痙になりやすいようです。
働き盛りの中年世代にも多く見られる症状でもあります。

書痙に悩んでいる人は、字を書く時の手の震えが恥ずかしい、変なことだと考え、人前で字を書くことが億劫になり、避けようとします。
しかし、このように書痙の症状に引きずられ、人前で字を書くことから逃げてしまうと、症状は改善されず、手の震えにとらわれたままで逆に症状を悪化させる恐れが出てきます。
逃げることでその場はしのげますが、一時的な逃避は、書痙は元より、対人恐怖症にとって何の解決にもなりません。

手の震えは恥ずかしい事ではありません。
できるだけ字を書くことから逃げず、震えながらでも書ききることから始めることが、書痙を解決する第一歩になります。
そこから徐々に人前で字を書く機会を増やし、手の震えからのとらわれを薄れさせていきましょう。

 

体の震えで更に萎縮してしまう震え恐怖症

対人恐怖症の症状で、人前で字を書く時に手が震える「書痙(しょけい)」という症状がありますが、書痙とは違い、字を書く時だけではなく、色々な状況で体や体の一部が震える「震え恐怖症」という症状もあります。
体が震える症状は、対人恐怖症の症状以外でも、うつ病や神経症の場合でも現れます。
神経症は、敏感で繊細な性格の人が、心理的なストレスによって不安や焦燥、動悸や呼吸困難、めまいやふらつき、震えや凝り等の症状が現れる病気です。
うつ病とは違うので、抑うつ気分や意欲低下等はそれほど強くないのが特徴です。

大勢の人前でスピーチや発表をする時に、緊張のあまり震えてしまったり、女性の場合だと、接待の時に、お客様に出す飲み物を持つ手が震えたり、かしこまった席で食事をする時に、箸やナイフを持つ手が緊張で震えてしまうことがあるようです。
また男性の場合も、飲み会や宴会の席で、上司や女性等からお酒を注いでもらう時に、緊張でコップを持つ手が震えてしまう等の症状が現れることが多いようです。

他にも、人と話をする時に、頭や首が震えてしまったり、人が見ている前でパソコンのキーボードを打つと、緊張して手が震えてしまったり、対面で話をしている時に、顔の一部分がピクピク震えてしまうとか、頭や足が震えてしまう症状が出て悩んでいる人も少なくありません。

このように、人前で何かしらの行動を起こす時に、体が震えてしまう事が、「恥ずかしい」、「人から変に見られる」といったマイナス思考に陥り、より症状を悪化させる場合がある対人恐怖症の震え恐怖症です。

 

思うように笑えなくなる笑顔恐怖症

人に変に見られているのではないかという不安からくる対人恐怖症の症状の1つで、友人や知人と雑談をしている中で、笑った時に顔が引きつって上手く笑えないといった症状の「笑顔恐怖症」があります。
同じく対人恐怖症の他の症状で、「表情恐怖症」がありますが、特に上手く笑えないことで悩んでいる人が多いので、表情恐怖症とは分けて名前が付いています。

人前で無理に笑顔を作ろうとして、顔がこわばり引きつったり、頬がピクピク動いたり、思ったように笑えない症状なので、そのことによって、「人から変に見られる」というマイナス思考が働き、症状が改善されず、逆に悪化してしまうケースもあります。

誰かに笑顔を指摘される等の、対人恐怖症の原因となる「外的要因」がきっかけとなり、上手く笑えなくなることが多いようです。
この外的要因がきっかけで現れた症状は、その症状に対する誤った認識によって、根本的な原因に目を向けず、症状だけにとらわれる「内的要因」によって症状が悪化されてしまいます。
この2つの要因によって症状が進んでいくと、笑顔恐怖症だけではなく、その他の症状を引き起こす可能性が出てくるので、気を付けなければなりません。

この症状で注意してほしいことは、脳や神経などの病気によって起こる「片側顔面痙攣」や「眼瞼痙攣」によって上手く笑えない場合もあるので、表情だけではなく、体全体の体調を見て、脳神経の病気の兆候があるような場合には、早急に病院を受診するようにしましょう。

 

表情がこわばってしまう表情恐怖症

対人恐怖症の症状の1つで、自分の表情が相手に嫌な思いをさせてしまうのではないかと過剰に意識し、無理やり表情を作ることで顔が引きつったりこわばったりする「表情恐怖症」と呼ばれる症状があります。
同じく対人恐怖症の「笑顔恐怖症」と似たような症状ですが、笑顔以外の場合でも症状が現れます。

嬉しい時や悲しい時に、感情に基づいて自然と変わるのが、人間の本来の表情になりますが、それを無理やり作った表情で対応すると不自然さを生み出し、その不自然さは相手にぎこちなさを伝えてしまいます。
ぎこちなさに気付いた相手の反応が変わる様子を見ると、さらに「自分の表情がおかしいせいだ」と関連付けて考えてしまい、また無理やり表情を作ろうとする悪循環を繰り返して、どんどん悪化していくのが特徴です。

人によって、表情豊かな人やそうではない人がいます。
表情恐怖症で悩んでいる人の多くは、表情が上手く作れないにもかかわらず、無理をして表情を作ろうと振る舞うことが、心のゆとりを無くしてしまい、このような悪循環に陥っているように感じます。

対人恐怖症の中でも、表情恐怖症は改善が難しい症状ですが、改善のポイントとしては、「自分の表情が相手に嫌な思いをさせてしまうのではないか」という考え方を改めることです。
表情も個性の1つなので、1人1人様々な表情があって当然のことです。
それを、相手に嫌な思いをさせてしまうと考えてしまったら、症状の改善は見られません。
自分の表情にとらわれずに、逆に相手の表情を観察してみるのもいいかもしれません。

 

容姿が悪いと思い込む醜形恐怖症

「醜形恐怖症」は、「自分の容姿が醜い為に人に迷惑をかけていないか」、「自分の容姿に極度のコンプレックスがある」、「整形してでも醜い顔を美しくしたい」等、自分の顔や体に異常なまでにコンプレックスがあり、そのことが原因で、社会生活に支障をきたしてしまう対人恐怖症の症状です。
鏡で何度も自分の顔や体を確認する等、強迫観念が非常に強い為、「強迫性障害」や「うつ病」、「統合失調症」を併発する確率もかなり高い対人恐怖症の一種と言われています。

症状が悪化すると、人との接触を避け、外出することさえ出来なくなり、鏡を見ることに恐怖を感じたり、逆に、常に鏡がないと不安になるという症状が現れる人もいます。
芸能人でもこの症状で悩んでいる人はいるようで、普通にしていても十分すぎるほどキレイな人でも、自分が思うコンプレックスを払拭できず、整形手術をしても満足できない状態にまで進行してしまう怖い症状です。

原因は様々ですが、容姿をからかわれたり、何気なく言われたりした一言がトラウマになり、極度に意識するようになることや、自分で「自分は醜い」と思い込んでしまうところ等から症状が現れやすいようです。

人が人を評価する判断基準として、容姿もある程度大事ですが、多くの人は容姿でその人を判断しません。
近くに人気者の知り合いがいたら見てみてください。
容姿というより、中身が素晴らしくないですか?
自分に自信を持つことが、対人恐怖症の醜形恐怖症を改善する第一歩になります。

 

大量の汗が気になってしまう発汗恐怖症

「発汗恐怖症」は、対人恐怖症の症状の一種で、運動や暑い場所での活動のような、大量に汗をかくような状況ではないのに、大量の汗をかいてしまうことに対して強い不安感を感じる恐怖症です。
多汗症とも呼ばれているこの対人恐怖症は、大きく分けて「全身性多汗症」と「局所性多汗症」の2種類があり、発汗恐怖症で悩む人の多くは、局所性多汗症の場合が多いようです。

局所性多汗症は、日常生活でストレスを受けることによって極度の緊張・不安状態になると、自分の意に反して発汗してしまい、顔や脇の下、手のひらや足の裏等に大量の汗をかきやすくなります。
このように大量に汗をかいてしまうことに対して強い不安感を感じてしまうのが、局所性多汗症の特徴です。

局所的に見られる多汗症なので、場合によっては目立ってしまうこともあります。
例えば、シャツの上からでも目立つ脇汗や、顔汗を大量にかくこと、頭に大量の汗をかき髪の毛がベチャベチャになる等、目立ってしまうことによって不安感がさらに大きくなり、精神的に追い詰められてしまいやすいのもこの症状の特徴と言えます。

普通、汗をかくことは生理的なことなので問題にはならないですが、汗をかいたことによって恥ずかしい目にあったり、人に迷惑をかけてしまった等というきっかけがあって発汗恐怖症になります。
汗をかくことが「悪いこと」のように思えて、不安感と恐怖心が増大されていきます。
こうなってくると、人と会うことに苦痛を感じ、人前や外出が困難になる場合もあるので、発汗恐怖症が対人恐怖症に分類されるという訳です。

 

自分の視線を気にする自己視線恐怖症

対人恐怖症の中に、自分や他人の視線を恐れてしまう「視線恐怖症」という症状があります。
その中でも、「自分の視線が人に不快感を与えていないか」と自責の念にかられてしまうのが「自己視線恐怖症」という対人恐怖症の症状の1つです。

会話をする時に、相手の目を見て話そうと思うと、自分の視線が相手に不快感を与えていると思い込み、相手の目を見て話をすることができなくなり、無理やり相手を見ようとして、不自然な視線のおくり方をしてしまい、そのことでさらに不快感を与えているのではないかとマイナス思考が働いてしまう悪循環に陥りやすい症状です。

自己視線恐怖症に似たような症状で、「正視恐怖症」がありますが、相手を正視すること自体に恐怖や不安等を感じる正視恐怖症と、自分の視線が相手に不快感を与えていないかと恐怖や不安を感じる自己視線恐怖症とは、全く別の症状と捉えられているので、間違えないように理解してほしいところです。

自己視線恐怖症に悩んでいる人は、対人恐怖症に良く見られる悪く強い固定観念(自分の視線が相手に不快感を与えている)と感情の抑圧が原因で症状が現れるので、それらを解消していくことが症状改善に繋がります。
まず、自分の中にこのような問題があるのだと認識することが必要で、認識できて初めて対処法が考えられるようになります。
無意識の内に症状が現れ、気がついた時には凝り固まった固定観念に支配されていることが多いこの症状は、時間をかけて固定観念を崩していくことが、症状を改善する有効な手段と言えるでしょう。

 

他人の視線を気にする他者視線恐怖症

対人恐怖症の症状の1つに「視線恐怖症」がありますが、一般的に視線恐怖症と言われているのは、他人の視線が気になり、恐怖や不安を感じる「他者視線恐怖症」のことになります。
対人恐怖症で言うところの視線恐怖症には、他にも「自己視線恐怖症」、「正視恐怖症」、「脇見恐怖症」があります。

日常生活を送る中で、誰でも他人の視線を気にすることは少なからずあります。
会社や学校等、集団生活を送っていると、「自分がどのように見られているか」、「自分がどのように評価されているか」等と意識してしまうものです。
しかし、その意識が行き過ぎると、異常なまでに他人の目を気にするようになり、他人の視線に恐怖や不安を感じようになってしまい、その恐怖や不安から逃れる為に外出しなくなるという対人恐怖症の症状が現れてきます。

他者視線恐怖症に悩む人は、道を歩いたり、ホームで電車待ちをしたりしている時等の、何気ない日常生活の中でも、どこに行っても常に誰かに見られていると感じてしまうので、自分で行動を制限してしまい、引きこもってしまうケースが多いようです。

この症状を改善するには、自分に対する視線への意識をコントロールすることから始まります。
他人からの視線によって、自分がどう見られているのかが気になる自意識が過剰になっている状態から、少しずつ距離を置けるように意識をコントロールしていくことによって、マイナス思考から抜け出しやすくなります。
そうすることによって、人とのかかわりの中で、他人からの評価や評判よりも大事なことがあることを実感し、自信が付いてくるようになれば、良い状態で回復に向かっていると言えるでしょう。

 

他人を正視できない正視恐怖症

他者視線恐怖症が、他人からの視線を気にする症状なのに対して、対面で話す相手の目を見て話すことに恐怖や不安、恥ずかしさ等を感じて、相手を正視することができないのが「正視恐怖症」と言われる対人恐怖症の症状の1つです。

人を正視して話すことに、恐怖や不安、恥ずかしさ等を感じてしまう症状なので、自然と相手から視線を外したり、視線が定まらず挙動不審と思われたり、相手に落ち着きがないという印象を与えてしまいます。
相手と正視することができないので、行動は不自然になりがちです。
その行動の不自然さに対しても、恥ずかしいとか、相手に変に思われていないか等と考えてしまい症状がどんどん悪化していく悪循環に陥りやすいのも特徴と言えます。
酷くなると、家族ですら会話をするのを避けたり、人と会うことですら苦痛に感じてしまったりするようになってしまいます。

他の視線恐怖症の種類で、「自己視線恐怖症」や「他者視線恐怖症」、「脇見恐怖症」等の、欧米等と違い、他人に配慮するという日本特有の文化から生まれた対人恐怖症よりも、どちらかというと社交不安障害の方に当てはまりそうですが、これでも対人恐怖症の症状の1つに含まれます。

正視恐怖症に悩む人が、人と正視する時にどれ程の恐怖や不安等の苦痛を感じているのかは計り知れません。
この症状に悩む人が近くにいたら、その人が正視すること、されることを苦痛に感じていることを理解するようにしましょう。
症状に悩む当事者だけではなく、周りのサポートも症状改善の手助けとなるでしょう。

 

正視恐怖症かどうかチェックする方法

■正視恐怖症とは?
世の中にはたくさんの恐怖症があります。高所恐怖症や閉所恐怖症のように、程度の違いはあれ多くの人がその対象に対して恐怖を感じることがある、または恐怖を感じることが理解できるものもあれば、なかなか人には理解されにくい恐怖症もあります。正視恐怖症も、そんな人からの理解が得られにくい恐怖症の一つでしょう。

正視恐怖症とはその名の通り、相手の顔を正視することに恐怖を覚える症状です。視線に対する不安や恐怖を抱く症状には正視恐怖症のほかに「脇見恐怖症」「他者視線恐怖症」「自己視線恐怖症」の計4種類の恐怖症があり、それらをまとめて「視線恐怖症」と呼んでいます。これらの恐怖症は独立して発症するものもあれば、複数の恐怖症を併発するケースもあります。

視線恐怖症は基本的には他者の視線に対して恐怖や不安を覚える症状ですが、正視恐怖症は自分の視線が相手を不快にするのではないか、恐怖を与えてしまうのではないかという不安のあまり、相手の顔をまっすぐに見ることができなくなってしまう症状です。会話をしているときはもちろん、会社の机や電車の向かい合った席のように会話をしている相手ではなくても、正面に人がいるだけで強いストレスや緊張を感じてしまうこともあります。

正視恐怖症を発症する原因の一つに、つり目や切れ長の目など目つきが鋭いことへのコンプレックスを持っていることが考えられます。この目で見つめることで相手が「睨まれているのではないか」と感じてしまうことを心配し、それが高じて恐怖症へと進行してしまうのです。また、正視することで相手に自分の顔をまじまじと見られてしまいます。それに対する恥ずかしさから正視することができなくなり正視恐怖症となるケースもあります。自分の外見に対するコンプレックスが原因ということで、同じく外見への強いコンプレックスが原因である醜形恐怖症を発症しているケースも多くなっています。自己視線恐怖症と混同されるケースもありますが、自己視線恐怖症は正視している場合に限らず自分の視線が相手に何かしらの影響を与えていないか気になってしまう症状です。正視恐怖症とともに自己視線恐怖症を併発するケースもあります。

正視恐怖症は視線恐怖症の一種ですが、対人恐怖症の一種として分類されることもあります。どちらも自分が他者からどのように見られているのかを過剰に意識するあまりに発症する症状という点が共通しています。

■あなたは正視恐怖症?
相手の目をまっすぐ見ることに対する恥ずかしさや苦手意識というものは、程度の差こそあれ多くの人が感じるものなのではないでしょうか。それが恐怖症の域に達しているのかそうではないのか、自分で判断することは難しいでしょう。そこでここでは、自分が正視恐怖症なのかそうではないのかをチェックできる項目をご紹介します。ここでご紹介するのは正視恐怖症の主な症状であり、該当する項目が多いほど正視恐怖症になっている可能性が高くなります。

・人と目を合わせることが恥ずかしい
・人と目を合わせることが苦手
・自分の目付きが相手に不快感を与えているのではないかと思う
・人と目を合わせることが苦痛
・家族や親しい人であっても目を合わせることは苦痛である
・人と向かい合っていると相手と目を合わせないようにしてしまう
・人と向かい合っていると顔がこわばる
・人と向かい合っていると相手をにらむような表情になってしまう
・人と向かい合う場面を避けてしまう
・人と向かい合っていると恐怖を感じてしまう
・人を直視できないことに恐怖心があり、それによって日常生活に支障が生じる

一つも当てはまる項目がなければ、正視恐怖症の心配はありません。
1~2個該当する項目があった場合は、正視恐怖症になりかけています。
4~5個該当する項目があった場合は、すでに正視恐怖症を発症しています。
9~11個該当する項目があった場合は、正視恐怖症のほかに対人恐怖症も発症している可能性があります。
12~15個該当する項目があった場合は、正視恐怖症と対人恐怖症が慢性化してしまっています。

■正視恐怖症の治し方
正視恐怖症の原因は自分の視線が相手に不快感を与えているという「思い込み」です。そのため、正視恐怖症を完全に治すにはこの思い込みをなくす必要があります。これは自分の力だけでは難しいため、カウンセリングを受けてみるのも効果的でしょう。

多少方法は荒っぽいですが、目線を合わせることにとにかく慣れるのも効果的な改善方法の一つです。何度も目を見て話すうちに、相手がそれに対して何の反応も示さないことに気付くでしょう。そうなれば自分が不快感を与えていることが単なる思い込みに過ぎなかったことに気付き、正視恐怖症はおのずと改善します。ただし、あまりにも不自然にじーっとみてしまうと本当に相手を不快にさせてしまう危険があるので、自然に目を合わせることができるようになるまでは一瞬目を合わせ、軽く反らしてまた目を合わせる、ぐらいにしておきましょう。

 

無意識に脇見することを気にする脇見恐怖症

自分の視界に人が入ってくると、無意識にその人に視線が移る(脇見)ことを、対人恐怖症の症状で「脇見恐怖症」といいます。
脇見自体は誰でも無意識にしてしまうことはありますが、脇見恐怖症の場合、脇見することで相手に迷惑をかけていると強く思い込み、悩んでしまう状態になります。
症状が進行して酷くなると、物に対しても同様の反応をします。
対人恐怖症にある同じ視線恐怖症の「自己視線恐怖症」や「他者視線恐怖症」、「正視恐怖症」と違い、重度になる場合が多いようです。

日常生活で、買い物中や道を歩いている時等、外出をすると会話を交わさないまでも、人と接する機会は多くあります。
その度に、視界に入る人に対して無意識に視線を移してしまい、そのことで相手に不快感を与えてしまったと自分を責め、罪悪感を抱いてしまうのがこの病気の特徴です。

脇見恐怖症で悩む多くの人は、自分が視線を移した事に対して罪悪感を抱いているので、視線のコントロールをする為に試行錯誤する傾向にあります。
しかし、視線のコントロールでは、脇見恐怖症は改善されません。
脇見恐怖症の本質は、「自分の視線が相手に不快感を与えている」とか「相手に迷惑をかけてしまった」等という強い思い込み自体にあります。

ほとんどの場合、凝視されている場合は別として、他人は他人からの視線を特別気にすることはありません。
脇見をすることがいけないことじゃないと思えるようにしていくことが、この症状の有効な改善策になります。
自分の考えだけで判断して悩み苦しまない為にも、カウンセリング等で相談相手に話をすることも、対人恐怖症の克服には大切なことになります。

 

緊張のあまりどもってしまう吃音症

対人恐怖症によって言葉がどもってしまう「吃音症(きつおんしょう)」は、言葉の言い出しで同じ音を連続して発したり、言葉が上手く言い出せなかったり、言葉が出るまでにしばらく音が出せない等の症状があります。
最近、「噛む」と表現される、単語や言葉を間違えて言ってしまうことがありますが、これは誰にでもあることで、対人恐怖症でもなければ吃音症でもありません。

吃音症は、他の対人恐怖症と比べて、自分以外の他人でも症状を発見することができるので、比較的早期発見に繋がりやすいです。
段階的に進行していく吃音症を、早期段階で発見すれば、改善にかかる時間も労力も少なくて済みますので、会話の中にどもりと思われる症状が出たら、早急に対応するようにしましょう。

その吃音症の段階は、5段階あるとされています。
まず、自覚症状はないが、初めの言葉が自然に出てこない第1段階(難発)、「こここここんにちは」等と、自覚症状がなく、同じ音を連続して発してしまう第2段階(連発型)、自覚症状が出始める第3段階(連発と伸発)では、言い出しの音を不自然に伸ばしてしまうようになり、第4段階(難発と連発と伸発)になると、それぞれの症状が酷くなり、その症状を完全に自覚し悩むようになります。
第5段階(難発と連発と伸発)では、言葉を発することを恐れて、人と会話をすることを避けるようになってしまいます。

原因は、情緒不安や脳内の異常、身近にどもっている人がいる場合等様々で、幼児期に症状が出る場合が多いようですが、いずれにしても、本人以外が気付くことができる症状なので、早期の発見と対処をするようにしましょう。

 

相手の反応が気になり会話に入れない雑談恐怖症

会社や学校等で、答えが決まっている会話なら問題なく話すことができるが、雑談の様に、目的がなく答えが決まっていない会話になると、何を話していいのか分からずに、恐怖や不安にかられる症状を、対人恐怖症で見られるところの「雑談恐怖症」と言います。

過去の経験で、雑談の中で自分が発した言葉が嫌な雰囲気を作ってしまう等の失敗や、自分の発言に自信がなく、頭の中で何を話すべきか考え過ぎてしまい、発言することができなくなることがきっかけになる場合が多く、その結果、対人恐怖症になり、雑談を怖がるようになります。

友人や知人から、相談や愚痴等を聞かされる「話を聞くタイプ」と、自分は楽しい話ができないし、コミュニケーションが得意じゃないという思いが強い為、相手に合わせた答えを自分の中で試行錯誤して話そうとするあまり「会話に入っていけないタイプ」の人に多く見られる傾向があります。

雑談は、そもそも目的も答えもない会話です。
もちろん楽しく話ができればそれでいいのですが、対人恐怖症の場合、自分の発言に対する相手の反応に強く影響されるので、雑談の中に、相手が喜びそうな、自分なりの答えのようなものを必死で探そうとします。
その為、会話についていくことも入ることもできず、雑談が恐怖や不安を感じる対象になってしまうのです。

過去の失敗や自信の無さによって引き起こされる雑談恐怖症は、自分が見たり感じたりしたことを、自然に話せるようになることが大事なので、雑談を楽しめるようにするには、自信を取り戻し、相手の反応に過敏になり過ぎないようにしましょう。

 

特に女性が気にするおなら恐怖症

ふざけた名前と思われるかもしれませんが、対人恐怖症の中には「おなら恐怖症」という、特に女性に多く見られる症状があります。
人前で、「おならが出たらどうしよう」、「おならをしたいけど恥ずかしい」、「おならが出そう」等の不安を強く感じてしまい、症状が進むと人前に出れなくなってしまう程の重症になります。
おなら恐怖症が、比較的男性より女性に多いのは、「おならは恥ずかしいもの」と捉える女性が多い傾向にあることが要因と考えられます。

対人恐怖症の中でもこの症状は意外と厄介で、おならに対する不安によって、さらにお腹にガスを作り出してしまうという悪循環に陥りやすい症状です。
内科的にも、不安感や恐怖心等のストレスから、悪玉菌によって腸内にガスが溜まりやすくなることが分かっており、内科的に腸内にガスを溜めないような処方をする対処法もありますが、根本的な治療にはなりません。

また、対人恐怖症のカウンセリングで、おならに対して敏感になり過ぎないようにとアドバイスをされても、実際に腸内にガスが溜まり、おならが出やすい状況で不安になっている本人としては、簡単にアドバイスを受け入れられない状態になっているのも厄介です。

しかし、この症状は「おなら」と「おならが出てしまうことへの不安」という明確な原因があり、おならに対しては、ある程度自分で対策をすることができます。
食事の時に、胃の中に空気を一緒に入れないようにすることと、ストレスを溜めないようにすることです。
対策によって少しでも改善を感じられれば、回復の兆しが見えてきたと考えていいでしょう。

 

疑われていると思い込む嫌疑恐怖症

人から「自分が何か悪いことをしたと思われていないか」と強く思い込んでしまう「嫌疑恐怖症」は、対人恐怖症のみならず、強迫神経症によっても引き起これさる症状の1つです。

特に決まった行動をする訳ではありませんが、自分が何かしようとすると、「悪いことをしていると思われている」という思い込みによって、恐怖や不安を感じてしまい、次第に行動範囲が狭くなり、人との接触を避けたり、逆に、相手に対して必要以上に身の潔白を強いろうとしてしまいます。

例えば、学校や会社から帰ろうと帰り支度している時に、カバンやバッグに荷物を入れていると、「物を盗んでいると思われている」と感じたり、道に迷って通行人に道を尋ねようとする時に、「声を掛けてどこかに連れて行こうと思われている」等と、相手が自分に抱く印象を極端に悪く考えてしまうのがこの対人恐怖症の症状の特徴です。

「嫌疑」という文字通り、他人から疑われていないかと強く思い込むことで、酷くなるとうつ病になってしまう場合もあります。

この症状は、他の対人恐怖症と同じく、その行為や考えが問題だと思われがちですが、実際はそうではありません。
嫌疑恐怖症の場合、「疑われていると感じて不安になる」ことが問題ではなく、「何をしても安心できない」ことが問題だと思います。

嫌疑恐怖症に悩む人の多くは、人から疑われようのない完璧な行動をしても、自分自身の思い込みによって不安を感じている場合がほとんどです。
凝り固まった強い思い込みによって、日常生活に支障をきたしてしまわないように、早めに専門家に相談することをお勧めします。

 

集団で食事を楽しむことができない会食恐怖症

対人恐怖症には、「会食恐怖症」と言い、友人や知人等と一緒に食事をすると、緊張で食欲減退、不食、吐き気等の症状が現れる場合があります。
人に見られながら食事をすることで、極度に緊張してしまうことからこの症状が出ています。
会食等をする機会の多い会社勤めのOLや、ママ友と交遊のある主婦等に多く見られる症状です。
女性同士は気を遣うことも多いので、対人恐怖症になる傾向が多いのはうなずけますね。

なぜ、人に見られながら食事をすることで極度の緊張状態に陥るのでしょうか。
会食恐怖症で苦しむ人は、会社の昼食時間やママ友とのランチ等で、人と一緒に食事をする際に、「人の食事が気になる」、「自分のマナーが人に迷惑がられていないか気になる」、「一緒に食事することに慣れない」等と考えることが要因となって、極度に緊張するようです。

極度の緊張は、吐き気や冷や汗、手足の震えや腹痛等の身体的不調となって現れます。
その身体的不調が起こってしまわないかと強く気にすることも、会食恐怖症を悪化させる要因になってしまうので、極度の緊張→身体的不調→自己嫌悪→極度の緊張と言う風に、悪循環に陥る危険性が高くなり、症状も酷くなります。

会食恐怖症だけではなく、対人恐怖症の他の症状でも言えることですが、苦手意識を強く持つとこのような悪循環に陥りやすくなるので、苦手意識を克服することが大事になってきます。
苦手だからといって避けずに、苦手を認識し認めた上でしっかりと向き合い、あえて苦手な状況に身を置くことで克服する場合もあります。
それでも克服できない場合は、専門の医師等に相談し、他の方法を試すことができるので、自分に合った克服方法を見つけ出しましょう。

 

自然に唾を飲み込めなくなる唾恐怖症

対人恐怖症は、人間が誰でも行う生理現象を、「人に不快感を与えていないか」「迷惑をかけていないか」と思ってしまう症状ですが、唾を飲み込む時の音でさえ、対人恐怖症に繋がる場合があります。
それは、「唾恐怖症」と言い、対人恐怖症によって現れる症状の1つです。
唾を飲み込む時の音や、喉仏が動いたり、唾を飲み込むこと自体を気にしたりして、このような行為をすることで、人に変に思われていないかと思い込んでしまう症状です。

普通に唾を飲めば何の問題もないのですが、唾恐怖症の人の場合、唾を飲み込む時の音や喉仏の動き、唾を飲み込む行為自体を気にしている為、なかなか飲み込めず口の中に溜まり、ますます唾を飲み込む行為を気にし出して悪循環を繰り返します。
このように、ごく自然な行動である唾を飲み込む行為でさえ、人に迷惑をかけていると思い込んでしまう、非常に難しい症状です。

過去に、唾を飲んだ時に周りから一斉に見られたり、音が大きくて注目されたりしたことがトラウマになり、症状が現れる引き金になる場合が多いようです。
この症状は、対人恐怖症だけではなく、強迫性障害の症状としても現れることがあります。

唾恐怖症を克服する為には、症状の度合いや原因の所在によって変わりますが、有効な克服方法は「認知行動療法」と言われています。
認知行動療法では、あえて人前で唾を飲み込む行為をしてもらいことで、この行為によって人に迷惑や不快感を与えていないということと、自分が不安や恐怖を感じなくてもいいと思わせる方法なので、一見荒療治のように聞こえますが、とても有効な克服方法として知られています。

 

とにかく自分の臭いが気になる自臭症

「自臭症」や「自己臭症」とも言われている「自己臭恐怖症」は、対人恐怖症の症状の一種で、口臭や体臭等、自分の体から発せられる臭いが非常に臭いと思い込み、自臭が臭いということで「人に嫌がられている」「人に迷惑をかけている」と恐怖や不安を感じる症状で、確信型対人恐怖症の一種とも言われています。
自己臭恐怖症は、対人恐怖症と同じく精神疾患になりますが、実際に口臭やワキガで臭いを発している場合もあるので、一概に自己臭恐怖症と判断できないケースもあります。

自己臭恐怖症の人は、自臭に過敏になりすぎて、実際には発せられていない自臭を周りの人が嫌がっているという妄想を考えるところから始まります。
症状が酷くなると、他人が何気なく行った咳払いや鼻に手を近付ける等の行為でさえ、自臭のせいだと感じてしまい、エレベーターや教室、バスや電車等の人が多数集まり、自臭がかがれやすい場所に過剰な恐怖心と不安感を抱くようになり、そのような場所を避けるようになります。
重度になるとうつ病を合併することもある、とても厄介な精神疾患です。

性格的に、完璧主義や完全志向の強い人が自己臭恐怖症になりやすい傾向にあります。
体臭や口臭は誰にでもあるものですが、自己臭恐怖症の人は自臭に過敏に反応してしまい、ちょっとした臭いでも人に迷惑をかけていると考えて、症状を悪化させやすい悪循環にも陥りやすいです。

自分の欠点を見つけ、改善しようとする努力は素晴らしいですが、過剰に反応してしまうのは良くありません。
欠点は程よく受け流し、誰しも完璧な人間はいないと考える思考を構築することが改善の糸口になります。

 

 

電話の音でさえ恐怖に感じる電話恐怖症

連絡手段として身近にあり、最近では携帯電話やスマートフォンの登場によってさらに普及している電話ですが、会社等で、人に聞かれていると思うと電話に出れなかったり、電話の音がなるだけで動悸が激しくなったり極度に緊張したりして動けなくなる等の症状が現れる、対人恐怖症の「電話恐怖症」という症状があります。
特に、オフィス勤務の若い女性に多く見られる症状です。

電話恐怖症と聞くと、電話機に恐怖を抱いているというイメージを持ちますが、実際は、電話機自体に問題は無く、人の目や電話の相手に対して感じている不安や恐怖といった感情が、電話恐怖症を引き起こしているので、対人恐怖症の症状として区別されています。

この対人恐怖症の原因としては、過去に電話対応で失敗したのを他の人に見られていたり、電話の相手に恫喝されたり、電話越しの声が聞き取れずに何度も聞き返して不快な思いをさせてしまったり等、トラウマ的な要因が挙げられます。
このようなトラウマが原因となって、電話対応や電話の音、さらには電話自体に恐怖や不安を感じてしまい、身体的な不調が現れるようになります。

また、レアなケースで言うと、携帯電話で着信相手が分かっていても、その人とは違う人物が電話を借りてかけているのではと考えたり、自分がかけようとした相手にかからないのではと考えて、恐怖や不安を感じる場合もあるようです。

今や電話は1人1台所有する時代になっています。
重要なコミュニケーションツールであるはずの電話に不安や恐怖を抱いていては、精神的に追い込まれてしまうので、なるべく早めに専門家に相談しましょう。

 

思ったように発言できなくなる失語恐怖症

対人恐怖症の症状の1つである「失語恐怖症」は、自分の発言が「相手を怒らせてしまわないか」、「不快と思われてないか」、「迷惑をかけているのではないか」等と考えて、恐怖や不安にかられる症状です。
失語恐怖症も、他の対人恐怖症と同じく、過去のトラウマ的な経験が引き金になりやすく、その時と似た状況や、嫌な過去を思い出してしまい、上手く話ができなくなってしまうのが特徴です。

例えば、自分では笑い話をしたつもりなのに、何故か怒られたり、つまらないと言われたり、相手が思うようなリアクションをしなかった時に、「自分が怒らせてしまった」、「話がつまらなかったからダメなんだ」と思ってしまいます。
ここまでなら誰でも経験する失敗談なのですが、対人恐怖症の人は、自分の発言が相手に悪影響を与えてしまったと強く思い込んでしまい、会話の度に「こう言ったら怒られないだろうか」「こう表現したら迷惑をかけないだろうか」等と、相手のリアクションを考えながら言葉を選ぶようになり、言葉を選んでいる間に会話が終わってしまい、思うように会話に参加できなかったということでも「失敗」したと思い込むという悪循環に陥っています。

人によって、話の笑いどころや泣き所等の「ツボ」は違います。
どんなに話術が得意な人でも、状況や雰囲気によって、思うようなリアクションが取れないことはあります。
しかし、失語恐怖症の人は、そういう風に考えられない程マイナス思考になっていて、自分の話に自信を失っている所に問題があります。

 

対人恐怖症の中でも代表的な男性・女性恐怖症

対人恐怖症の中でも良く耳にする恐怖症で、「男性恐怖症」と「女性恐怖症」があります。
一般的には、男性が女性に恐怖を抱くことを女性恐怖症、女性が男性に恐怖を抱くことを男性恐怖症だと思われていますが、実際にあった症例として、男性が男性に対して、女性が女性に対して恐怖を抱くという、同性に対して症状が発生するケースも報告されています。

この対人恐怖症に悩む人の多くは、幼い頃に父親や兄弟等から虐待やいじめ等を受けることがきっかけとなる場合が多く、虐待やいじめを受けたことがトラウマとなり、対象である男性若しくは女性と会話をすることや一緒に仕事をすること、同じ空間にいることや近づくことによって思い起こされる極度の恐怖心から、対象を避けたり接することを恐れたり等の心理的に委縮するような状態や、体の震えや発熱等の身体的不調が症状となって現れます。

過去に受けた強烈な体験がトラウマとなって、対象の男性や女性と上手くコミュニケーションを取ることができないこの対人恐怖症は、克服するのに非常に時間がかかる症状の1つです。
恐怖症の人からすると、対象になる男性や女性に対して無条件に恐怖を抱いてしまうので、その先のコミュニケーションを図ることができません。
まず、男性や女性と接することに恐怖を感じないようにするしかありません。
ただ、ここで焦って急に接触を増やしたり、無理やり会わせたりしようとすると、逆効果になる可能性が高いので、時間をかけて慣れていくようにしましょう。

 

あえて辛い状況に身を置いて克服しよう

対人恐怖症には、「暴露療法(エクスポージャー)」という治療法があります。
この方法は、対人恐怖症によって不安や恐怖を感じ、回避したり行かないようにしている場所や状況にあえて身を置き、実際は、自分が不安や恐怖等を感じる場所や状況に、思っていたような不安や恐怖等を感じる必要がないということを理解させていくという方法です。
簡単に言うと、不安を感じて症状が現れる状況を満員電車とした場合、その満員電車に実際に乗ってもらい、満員電車に乗っても不安を感じる必要がない、誰にも迷惑をかけていない等と思わせるようにするということです。

暴露療法は、よく「パブロフの犬」の話を引用して紹介されます。
「この状況ではこうなる」、「あの状況ではああなる」等の、対人恐怖症の人が間違えて身に付けてしまった条件反射を、正しい条件反射に置き換える方法と考えていいと思います。

このように、暴露療法によって間違った条件反射を改善する方法を実践する際に注意してほしいことは、「急ぎ過ぎない」、「慌てない」ことです。
良かれと思って、いきなり不安や恐怖を感じる場所に身を置いても、かえって逆効果になる場合があります。
実践する際は、不安や恐怖が軽い段階から徐々に段階を踏んでいくことをお勧めします。
また、自己判断や興味本位で試そうとしたりせず、専門家にアドバイスを受けながら実践しないと、これも逆効果になってしまう可能性があるので注意しましょう。

呼吸法や自律訓練法等と併用しながら、少しずつ恐怖を克服できるようになりましょう。

 

腹式呼吸で緊張を和らげて克服しよう

対人恐怖症によってパニック状態になり、呼吸が乱れて「過呼吸」になるという人は多いと思います。
このような状況になった時に、パニック状態を落ち着かせ、過呼吸を軽減できる呼吸法が「腹式呼吸」です。
過呼吸とは、呼吸が浅すぎたり深すぎたりすることで、脳内に送られる酸素と二酸化炭素のバランスが崩れ、息苦しくなったり、めまいやふらつき、手足のしびれ等の症状が現れます。

対人恐怖症で悩む人は、自分が苦手だと思い込んでいる物事に出くわした時に、強い不安感や恐怖感を感じるのと同時に、身体的に現れる過呼吸等の発作に対しても不安感や恐怖感を抱きます。
それによって、「また症状が出てしまう」、「苦しくなる」等と考えて、過去に経験した不安や恐怖が蘇り、悪い方向に物事を考えるようになる傾向になります。
そこで、自分が置かれた状況や出くわした状況で、不安や恐怖を感じ、パニックになる前やパニックを起こした時に対処する為の方法が腹式呼吸です。

腹式呼吸は、お腹に空気を溜めこむイメージで鼻から息を吸い、鼻からゆっくり吐き出します。
この時、お腹を使って空気を押し出すイメージで吐き出しましょう。
呼吸法に慣れてきたら、吸う時に自分が好きないい香りをイメージし、吐き出す時に不安や恐怖に感じる悪いイメージを吐き出すようにするとより効果的です。

対人恐怖症における腹式呼吸での対処法は、できるだけパニックになる前に、呼吸の安定と気持ちを落ち着かせることが理想なので、自分がどのような状況で症状が出るのかを把握しておく必要があります。
自分の症状をしっかりと把握し、いざという時に対処できる心構えを持ちましょう。

 

緊張とリラックスの繰り返しで克服しよう

対人恐怖症を克服する方法として、「自律訓練法」という方法があります。
この方法は、心と体の緊張を和らげてリラックスする方法です。

なぜリラックスすることが対人恐怖症の克服に繋がるのかというと、対人恐怖症は、人や物、行動等に対して不安と恐怖を感じ、心身が極度に緊張して、それが長期的に続いてしまうことによって余計に敏感になり、必要以上に不安や恐怖を感じてしまうようになります。
自律訓練法は、その必要以上に不安や恐怖を感じてしまうような心身の緊張状態を和らげてリラックスすることによって、恐怖症の対象となる物事に見舞われた時でも過敏に反応しないようにすることで克服へと繋げる方法です。
自律訓練法という名前のとおり、不安や緊張は自律神経の反応によって起こるものなので、普通は自分で制御できない自律神経を、間接的に制御することを訓練する方法になります。

自律訓練法の基本動作は、まず息を吸い込んで7秒だけ息を止めます。
次に、息を止めている間、腕や足等を使って肉体的に緊張状態を作ります。
例えば、手のひらを下に向けた状態で両腕を体の前に伸ばし、右手を上、左手を下に重ねた状態で、右手を下向きに、左手を上向きに力を入れて、ゆっくりと緊張状態を作ります。
7秒経過したらゆっくり息を吐き出しながら緊張状態を解いていきます。
完全に力が抜けたら目を閉じて、そのまま1分間ゆっくり呼吸しながらリラックスすることを意識する。

以上、簡単な方法ですが、対人恐怖症の克服に有効な方法として実践されているので、試してみる価値はあると思います。
ただ、自律訓練法は即効性がある訳ではないので、時間をかけてゆっくりと焦らずに行うようにしましょう。

 

悪い思い込みを取り払って克服しよう

対人恐怖症に悩む人は、通常、不安や恐怖に感じないようなことに対して、過剰すぎる反応をしてしまい、そういう物事に対してマイナス思考が働き、不安や恐怖を回避する行動に出てしまいます。
そうなると、マイナス思考によってますます不安や恐怖が増大され、思うような行動がとれなくなるという悪循環に陥ります。

そこで、対人恐怖症を克服する為の治療法として、「認知行動療法」という方法が行われます。
認知行動療法は、対人恐怖症のきっかけでもあり、症状を進行させる要因である間違った思い込みを、前向きな考えに改善していくという方法になります。
具体的な治療方法ですが、まず、自分の日常生活における不安や恐怖に対する心の状態を把握することと、対人恐怖症に対する問題点を明確にします。
次に、間違った思い込みが原因で、不安や恐怖から回避しようとする行動を克服する為の自律訓練法や呼吸法を身に付け、対人恐怖症の症状が現れた時に対処できるようにしつつ、症状が現れる状況にあえて身を置き、少しずつ慣れていくようにする暴露療法(エクスポージャー)を行っていきます。

認知行動療法は、「間違った思い込みの改善」を治療する上で、自律訓練法や呼吸法、暴露療法や投薬療法等を併用して行っていくので、期待する効果に即効性はありません。
どの対人恐怖症の症状の場合でも、体に染みついたマイナス思考と強い不安や恐怖は簡単には治らないので、治療を受けたのに改善されないと悲観的になることはありません。
継続することで多少の症状改善が見られれば、それが自信に繋がり、改善の兆しが見え始めれば、克服に近付いたと言えるでしょう。

 

恐怖症性不安障害の原因と克服方法が、対人恐怖症にも役立つ

<h4>■恐怖症性不安障害とは</h4>
「恐怖症性不安障害」は、「不安障害」の1種で、「不安障害」とは対象となるものに対する過剰な不安によって生活に支障を来す疾患の総称です。恐怖症性不安障害の場合、高いところに恐怖を感じる「高所恐怖症」や閉ざされた空間に恐怖を感じる「閉所恐怖症」など特定の場所・状況がその恐怖の対象であったり、あるいは尖ったもの・鋭いものに恐怖を感じる「先端恐怖症」、男性あるいは女性に対して恐怖を感じる「男性恐怖症・女性恐怖症」やブツブツしたものに恐怖を感じる「集合体恐怖症」など特定の物質がその対象であったりします。理性ではそんなものに異常な恐怖を感じるのは不合理だと分かっているのに、感情をコントロールできず、動悸や発汗、震え、呼吸困難などの身体的症状や気が狂ってしまうのではないかと感じるほどの強い精神的症状を表すのです。

<h4>■恐怖症性不安障害の原因</h4>
恐怖症性障害を発症している本人は、何故その状況や物質にそれほど異常な恐怖心を抱くのか、自分でも原因が分からないことが多いのですが、突き止めると過去に何らかの原因がありトラウマとなっている場合が多いようです。例えば高所恐怖症の場合、「子供の頃高いところから落ちて怪我をしたことがある」「子供の頃転落事故の現場を目撃した」といったショッキングな出来事をきっかけに「高いところは恐ろしい」と脳が認知してしまいそれがずっと続いてしまうのです。このように感受性の強い子供の頃に恐怖感を植え付けられるような経験をしてしまうと、恐怖症性不安障害を発症しやすくなると考えられており、実際、不安障害は小児期から思春期にかけて発症しやすい疾患であることが分かっています。

また生物学的に言うと、不安や恐怖を感じるのは感情を司る脳である偏桃体によるものですが、この偏桃体の働きが強くなりすぎると不安や恐怖を感じる神経伝達物質であるセロトニンやGABAが異常に活性化して恐怖症のような過度の不安感や恐怖感を与えてしまうと考えられています。従って、恐怖性不安障害もこの偏桃体の過剰な働きが原因であり、特に日本人は他の人種よりも不安障害になりやすいことから、日本人は偏桃体の働きが強すぎる体質なのではないかとも言われているのです。また不安障害を発症する人は、完璧主義であたり心配性であったり神経質であったりといった性格的な傾向があり、加えて強いストレスに長期間さらされることで心身ともにリラックスできず些細なことでも不安を感じやすくなるようです。

<h4>■恐怖症性不安障害の克服方法</h4>
恐怖症性不安障害の場合、その恐怖対象となるものによって、そもそも克服しなければならないものなのか、単にその恐怖対象に近づかなければ良いだけなのかが異なります。例えば特定の動物恐怖症であれば、その動物に近づかないようにするだけで日常生活に支障を来さずに済みます。しかし対人恐怖症であれば社会生活を営むことが難しくなりますから、これは克服すべき障害と言えるでしょう。恐怖症性不安障害を克服するのであれば、いずれにせよ専門家の助けが必要となりますが、その治療法には以下のようなことが挙げられます。

<h5>1.認知行動療法</h5>
前述の通り恐怖症は脳が「この物質(状況)は恐ろしい」と認知してしまっていることによりますから、まずはその間違った認識を修正する必要があります。これを認知行動療法と呼ぶのですが、そのためにはまず恐怖を感じるメカニズムを知り、自分のその思考回路を把握します。そのうえで恐怖を感じる状況を客観的に見る癖をつけていき、恐怖を感じそうになったり実際に感じたりした時にどう考えればいいか、思考を調整していくのです。例えば前述の高所恐怖症の例で言えば、「高いところ全てが以前見た転落事故現場ではない」「安全策がとられている場所なら高くても転落の危険はない」などと認識を調整していくわけです。

<h5>2.暴露療法</h5>
暴露療法とは、一言で言えば「あえて恐怖の対象に近づくことで心身共にその対象に慣れさせる」といういわばショック療法のことです。恐怖症性不安障害を抱えている人は、恐怖心からその対象を避け続けますから、どれだけ「本当は恐怖の対象でもなんでもない」と言い聞かせようとしても、それを実感することができません。それで、暴露療法によって少しずつその恐怖対象に近づいていき、「本当に怖いものでもなんでもないんだ」と実感させることで克服するわけです。この暴露療法のポイントは、あくまで「少しずつ」で、いきなり耐えられないほど辛い状況に直面させられるとかえって恐怖心が強まってしまうため、「辛いけれどギリギリ何とか耐えられる」程度から慣れていく必要があります。例えば再び前述の高所恐怖症の例で言えば、最初は「ビルの2階の窓から1分間外を眺める」ということから始め、3階、4階・・と徐々に高くして眺める時間も増やしていく、それらに慣れてきたなら次は橋を渡ってみる、更にはモノレールやロープウェイに乗る・・という風にレベルアップしていくわけです。

恐怖症性不安障害の治療では、これらに加えカウンセリングや薬物療法なども併用していきます。