接骨院、整骨院とは

柔道整復師が治療を行う施術所を、「接骨院」や「整骨院」と呼びます。
両者の中身に違いはありませんが、比較的新しい施術所が「整骨院」を名乗ることが多いです。
柔道整復師は国家資格で、「骨折、脱臼、打撲、捻挫、肉ばなれ等」の治療ができます。
柔道整復師による上記の「ケガの治療」なら、健康保険は治療を目的としたものですから、健康保険が使えます。
似たような名前で「整体院」がありますが、こちらは国家資格がなくてもできるマッサージ屋さんです。
整体院のマッサージは無資格者でも出来る民間療法で、主に疲労回復が目的です。
こちらは治療とは呼べないため、健康保険は使えません。
近頃は「てもみん」等といった入りやすいマッサージ屋さんが多く展開していますが、それらに健康保険が使えないのと一緒です。
見分け方は「骨」という字がつくかどうかで、骨が付いている接骨院・整骨院なら国家資格を持った柔道整復師の施術が受けられます。

接骨院は病院と同じ3割負担?

医療機関では健康保険を使えば、一部負担は3割分で済みます。
しかし医療機関以外、例えば国家資格を持つはり・きゅう師、按摩マッサージ師の施術を受けた場合、保険が使える場合でも一度10割全額を負担した後に「療養費申請書」「医師の同意書」「領収書」を保険者に提出して7割分を払い戻してもらうのが原則です。
接骨院は医療機関じゃないから全額自己負担・・・となりそうですが、
① 日本はかつて整形外科医が不足していたこと。
② 従来の習慣上、特に都市外に住む人の多くが外科医より柔道整復師の施術を受けることが多かったこと。
③ 整形外科医の治療と柔道整復師の施術で、共通する部分もあること。
という理由で、医療上は若干問題とされつつも、協定を結んだ上での療養費の委任払いが昭和11年に認められました。
つまり、本来患者が持つ7割分の請求権を、委任された接骨院が代わりに権利行使するわけです。
この委任払いのおかげで、接骨院は医療機関ではないけれども、例外的に患者は3割負担で治療を受けられるようになっています。

接骨院なら全部が健康保険適用できる?

接骨院の入口には必ずと言っていいほど
「各種健康保険対応」と表記されています。
「じゃあ、ここの接骨院に通えば健康保険が使えるのか」
と思うかもしれませんが、そうではありません。
健康保険が使えるかどうかは、「どの接骨院で治療を受けたか」ではなく「どんな治療をしたか」で決まります。
健康保険が使えるのは、厚生労働省の通知(平成9年4月17日 保医発57)から関連部分を抜き出すと
・療養費の支給対象となる負傷は、急性又は亜急性の外傷性の骨折、脱臼、打撲および捻挫であり、内科的要因による疾患は含まれない。
・急性又は亜急性の介達外力による筋、腱の断裂(いわゆる肉ばなれをいい、挫傷を伴う場合もある)については算定して差し支えない。
・単なる肩こり、筋肉疲労に対する施術は、療養費の支給対象外
・あんま(指圧及びマッサージを含む)のみの治療を必要とする患者に対する施術は請求対象としない
・受傷後日数を経過して受療する患者に対する施術については、現に整復、固定又は施療を必要とする場合に限り初検料、整復料、固定料又は施療料を算定できること。なお、整復、固定又は施療の必要がない場合は、初検料、後療料等により算定すること。
となっています。
分かりにくいので、もっと噛み砕いて一言で言うと
「負傷原因がはっきりした外傷性のケガの治療なら健康保険使ってOK。でも、ケガも慢性化したらダメよ」
という具合になります。具体的には以下のような場合は健康保険が使えません。
・日常的生活での慢性的な腰痛や肩こり
・単なるマッサージ代わりの利用
・神経痛(リウマチ・慢性関節炎など)
・脳疾患後遺症などの慢性病
・症状の改善が見られない長期の施術
もちろん、これらの施術を接骨院で受けてはいけない訳ではなく、10割自己負担で受けるなら何も問題はありません。
この「急性又は亜急性の外傷性の骨折~捻挫」の意味ですが、国会議事録(平成16年3月1日)の中で
「亜急性とは、身体の組織の損傷の状態が急性のものに準ずることを示すものであり、外傷性とは関節等の可動域を超えた捻れや外力によって身体の組織が損傷を受けた状態を示すもの」
と説明されています。
これが健康保険が使える範囲で柔道整復師の業務範囲でもある、というのが厚生労働省の公式見解ですが、法律の根拠はないようです。
また「亜急性の外傷」という言葉は医学的には存在せず、医師会と柔整師会でも「亜急性」のとらえ方が違います。
現在厚労省ではこのあたりの文言について「負傷の原因が明らかで、身体の組織の損傷の状態が慢性に至っていない~」という表現にするよう検討中です。
ちなみに、医師から医療上必要であるという内容の同意書がある場合は、健康保険を使ってはり、きゅう、マッサージを受けることはできます。
しかし、接骨院の治療は医師の同意がなくても保険適用の施術を受けることができます(骨折・脱臼を除く)。
そのため上記に該当する保険が効かない治療なのに、違法に保険請求をしている事例が後を絶ちません。
心ない接骨院の場合、患者が知らないのをいいことに「大丈夫ですよ、健康保険は使えますよ」と説明し、健康保険証を提示させ、実際はマッサージをしているだけなのに、頸椎捻挫・背部挫傷の施術で保険請求をしたりしています。
保険請求の権利は本来患者が持っていますが、その権利を違法に行使するわけです。
今まで一度も犯罪を犯したことがないような善良な市民が、自分の知らないところで詐欺の片棒を担がされてしまうことが起こっています。
また患者によっては
「保険料払ってるんだし、保険を使わないと損。使って何が悪い」
とばかりに患者も了承の上、接骨院と患者ぐるみで不正に保険を使っている事例もあります。
このように限りある財産を不正に食いつぶしてしまっては、本当に医療が必要な人に必要な医療が行き渡らなくなってしまいます。
正しい施術をしている接骨院、正しい受療をしている患者が損をするようなことになってはいけません。

 

接骨院は約束を守らないと経営できない

接骨院は都道府県、地方厚生局と協定、契約を結ぶことで、患者が持つ7割分の請求を代理行使できるようになります。
地方厚生局とは、厚生労働省の出張所みたいなものです。
つまり接骨院は国と都道府県と、「正しい施術、運営、請求をするので7割分くださいね」ときちんと約束をしているわけです。
代表的な約束事は例えば、
こういった約束事をやぶった場合は、認定を取り消されてしまいます。
7割請求できなくなった接骨院は患者から10割受け取って、患者は自分で7割を保険に請求することになることになります。
そんな面倒なことは患者も嫌がりますので、客足が遠のいてしまいます。
つまり療養費受療委任の認定取り消しは、接骨院にとって死活問題となります。

柔道整復師の施術に係る療養費算定基準の実施上の留意事項等について(厚労省通知 平成9年4月17日 保医発57)
・脱臼、骨折は医師の同意を得ないとダメ(応急処置は除く)
・健康保険が効く範囲の規定
・入院中の患者の治療は請求できないこと
・往療療は、下肢の骨折又は不全骨折、股関節脱臼、腰部捻挫等による歩行困難など真に安静を必要とするやむを得ない場合以外は請求できない
・近接部位の算定方法(算定できる部位とできない部位)
・打撲・捻挫の施術が3カ月を超える場合、長期施術継続理由書を添付すること
・4部位目は算定できないこと
・施術録を作成し、5年間保管すること
・患者が支払う一部負担金は、施術費用の1割、2割または3割であること(端数は四捨五入)
といった内容が記載されています。
他にも、厚労省通知(平成22年5月24日保医発0524 3)においては、
・3部位目を算定するときは、すべての負傷名にかかる「具体的な負傷の原因」を申請書の「負傷の原因欄」に記載すること
・領収書を無償で交付しなければならないこと
・患者から施術の明細書を求められた場合、療養費算定項目が分かる明細書を交付すること。(無償でなくても良いが、実費相当とするなど社会的に妥当な価格設定とすること)
などが定められています。

さらに接骨院が都道府県と地方厚生局と結ぶ「協定・契約」の中には、以下のような内容の規定があります。
・協定を遵守しないとき、不正不当をはたらいたとき、その他不適当と認められるときは認定を取り消す
・関係法、通達を遵守し、懇切丁寧に柔道整復に関わる施術をすること
・健康保険の運営を損なうような経済上の利益の提供により、患者を誘引してはならない
・柔道整復師の氏名を掲示すること
・健康保険証によって療養費を受療する資格があることを確認すること(緊急時を除く)
・厚労省の算定基準(上記)により算定した額を請求すること
・患者からは一部負担金(1割~3割)の金額の支払いを受けること。これを減免又は超過して徴収しないこと
(健康保険を使っているのに、一回あたり定額500円とかは契約違反です。)
・領収書は無償交付。明細書は患者の求めに応じて交付。
・施術録を作成し、5年間保存すること。
・施術は必要な範囲で行う。とりわけ長期又は濃厚な施術にならないよう努めること。
・申請書には患者の自署により、住所氏名の記入を受けること。(患者が負傷等の理由で書けない場合は代理記入し、患者から押印を受けること)
・3部位目を請求するときは、すべての負傷名にかかる具体的な負傷原因を記載すること。
・接骨院は療養費申請書を毎月10日までに柔道整復審査会が設置された国保連合会へ送付すること。
・国保連合会は申請書の事前点検をし、不備がある場合は返戻すること。
・保険者は受療委任の療養費の支払いを行う場合は、柔整審査会の審査を経ること。
・保険者は支給額の減額又は不支給がある場合は所定の様式を記入の上、申請書とともに返送すること。
・接骨院は保険者の支給決定、審査会の審査内容に不服がある場合、書面により国保連合会に対して再審査を求めることができること。
・接骨院が廃止されても、帳簿書類については5年間は検査報告できるようにしておくこと。
こういった約束事を結んでいます。
一部重複した内容もありますが、これらの約束事に違反した接骨院は、地方厚生局・都道府県から指導が入り、場合によっては認定が取り消されます。

 

接骨院の治療は、現実と乖離している

全国保険医団体連合会は平成21年12月に、整形外科医と一般市民にアンケートを実施しました。
接骨院の請求の99.2%が捻挫、打撲
負傷3部位以上の請求が50.5%
整形外科医を対象としたアンケートだと、捻挫・打撲の割合は「3%未満」が35.8%と最も多く、加重平均で6.1%
長崎県保険医協会が行った整形外科医に対するアンケートでも、捻挫・打撲の割合は4.9%
一般市民に対するアンケートで、本来保険請求が認められない慢性の肩こり・腰痛で接骨院を受診したことがあるという回答が45.3%
捻挫・打撲全体の割合に占める3部位の割合は整形外科の92.6%が「3%未満」との回答
日本臨床整形外科学会(JCOA)の全国一斉調査でも、平均外傷部位数は1.22部位
整形外科医の93.4%が、接骨院のせいで発症もしくは悪化した症例を経験したことがあると回答。
長崎県保険医協会のアンケートでも65.5%があると回答
骨折の見落とし、施術が原因と思われる骨挫傷、肩関節脱臼を「五十肩」と診断し誤った施術のため骨髄損傷、化膿性脊椎炎の悪化、亀裂骨折を温めて血腫を増大などといった具体例が整形外科医から寄せられている

 

厚労省による、接骨院の課題とは

多部位、長期、頻回が課題となっている。
審査体制の充実のため、都道府県に柔道整復療養費審査会を設置。
受療委任の契約の当事者である地方厚生局、都道府県が指導監査を実施。
平成22年
多部位請求の適正化(4部位目33%→0%、3部位目80%→70%)
領収書発行、希望者への明細書発行を義務化

平成25年
多部位の給付率見直し(70%→60%)
打撲・捻挫で3カ月を超えて頻度の高い施術をする場合、経過や理由の記載を義務づけ
経済上の利益の提供による患者の誘引を禁止 など

保険者には与えられているが、審査会には患者調査、施術所調査の権限が与えられていない。
柔整療養費の疾病別内訳では骨折、脱臼の割合はわずか0.1%
患者の年齢分布は、年齢と共に上昇し、65歳~74歳が18.8%とピーク
経過月数3カ月を超過する(長期施術継続理由書が必要)申請書の割合は1割。3カ月以内が9割。平均は1.98カ月。
平成21年に3部位以上の割合は52.7%だったが、平成26年には31.6%(その分2部位がまるまる増加)
施術料金は長期にわたり、多数の部位に対して、頻度の高い施術を行うことがより多くの収入に繋がる。
いたちごっこのように、同一患者において負傷と治癒を繰り返すといった「部位転がし」という不正請求の手口が指摘されている。
1~2部位、3カ月未満で治癒と負傷を繰り返す、審査の目をかいくぐり同じ施術所で長期の療養が可能となる

 

暴力団による接骨院不正請求事件も

平成27年11月、不正に保険請求をしたとして、警視庁組織犯罪対策4課が暴力団組長、接骨院を運営する役員十数人を詐欺容疑で逮捕。
架空の施術記録を作成し、都内の自治体など保険者100団体以上に療養費を架空請求、1億2千万円あまりをだまし取った疑い。
患者は不正請求の見返りに数千円を受け取り、請求に必要な申請書複数枚にあらかじめ自署し、患者ぐるみであった。
加入者が多く審査業務が膨大のため審査が甘いと言われる国民健康保険が狙われていた。
患者の負傷部位を数カ月おきに変更する、「部位転がし」だった
患者1人あたりの療養費の架空請求を毎月数千円~数万円程度にとどめ、少額請求を繰り返していたこと

 

 

接骨院アンケートには答えないといけない?

接骨院にかかっていると、あなたが加入中の健康保険から「通院内容の確認」といった名目で、アンケートが届くことがあります。
厚労省は通知(平成24年3月12日 保医発0312 1)で「柔道整復師の施術の療養費の適正化への取組について」で、保険者に対してこのアンケート(医療費通知)を積極的に送るよう促しています。
保険者はこういった事務を民間業者に委託できるため、業者から送られてくることもあります。
送付対象者は、基本的に「多部位」「長期」「高頻度」で、厚労省の具体的な基準では「3部位以上」で「3カ月を超えて」「月10~15以上」通院している人です。
「多部位」「長期」「高頻度」で請求すればするほど、接骨院は儲かるため、これらの水増し不正請求が多いためです。
あくまで厚労省の1つの基準なので、短い通院だとでも「怪しい接骨院」に通院している場合など、保険者によってはアンケートが届くこともありえます。
内容は「接骨院名」「通院回数」「支払い金額」「負傷部位」「負傷原因」「申請書に自署したか」など。
健康保険法上、保険者は患者に文書や回答を命じることができる権利があるため、患者には回答義務があります。
義務はありますが、罰則はないため、回答するのがどうしても嫌なら無視しても大丈夫でしょう。
アンケートを送られること自体が嫌なら、送付元に連絡を取れば、保険者によっては送付を止めてくれる場合もあります。
ただし不正な接骨院を見つけたり、患者に正しい保険の使い方を案内したりすることが目的のため、回答することが望ましいのは言うまでもありません。
正直に回答するのが望ましいですが、そうされると困るのが不正請求をしている接骨院です。
よくある不正請求の例だと
・単なる肩こり、慢性的な腰痛で通院した。保険は使えると言われ、施術内容が「頸部捻挫」「肩関節捻挫」「腰部打撲」の治療になっていた。
・病院で神経痛の診断を受けた。接骨院から保険が効くといわれ、マッサージを受けた。施術内容が「臀部挫傷」「大腿部挫傷」の治療になっていた。
・重い物を持ったときに、肩と腰を痛めて接骨院を保険で受診した。施術内容ではケガをしていない「膝関節捻挫」まで治療したことになっていた。
このような「単なるマッサージをケガの治療をしたことにする」「施術の水増し」が保険者にバレてしまいます。
そのため接骨院によっては、患者に対して
「健康保険からアンケートが届いたら自分で書かずにウチに持ってきてください。正しく書かないと健康保険が使えなくなっちゃいますので」
と説明するところもあります。(私も実際そう言われたことがあります)
こうすれば患者からのアンケートで不正請求が発覚しません。
なので「自分でアンケートを出さないように」と言ってくる接骨院は要注意です。

集めたアンケートの使われ方ですが、
①接骨院の請求内容と、患者の回答が違うものを見付ける
②不正が疑われる接骨院を見付ける
①まず、接骨院の請求と、患者の回答が違うアンケートを見付けます。
この場合接骨院の請求が間違っている場合もあれば、患者が勘違いしていることもあるので、接骨院に聞き取りを行います。
接骨院「すみません、請求を間違えていました・・・」
となれば、保険者は接骨院に対して、受け取った7割分のお金を返還させます。
接骨院「いやいや、それは患者さんが勘違いしてるんですよ。これが証拠の施術録です」
となれば、それ以上は保険者は分かりませんので、それまでとなります。
しかしあまりにも「間違いが多い」「証拠の施術録が怪しい」となれば、保険者はその接骨院を重点的に調査します。
②の不正が疑われる接骨院を見付けるわけです。
ただし保険者は接骨院に対して、指導や認定の取り消しをする権限がありません。
その権限を持つ国(地方厚生局)と都道府県に集めた情報を提供することしかできません。
健康保険は3000種類以上あって、その内の1つの保険者だけの力では、接骨院の運営許可をどうすることもできないのです。
接骨院に対して強い指導力を持っているのは、「国」と「都道府県」ということになります。

 

 

正しく接骨院にかかるために

正しく健康保険を使う

接骨院で健康保険が使えるケースは限られています。
外傷性のケガの治療でなければ、接骨院で健康保険を使うことはできません。
接骨院ではケガや痛みの原因を正確に伝えましょう(いつ、どこで、何をして、どんな症状があるのか)
原因が分からない慢性的な痛み、内科的原因の痛みなら、きちんとした医療機関に通院した方が良いでしょう。
単なるマッサージ代わりの利用では健康保険は使えません。
不正だと分かった上で「気持ちいいから」「安いから」といった理由で、接骨院と口裏を合わせて健康保険を使い続けることはやめましょう。

自分で署名する

接骨院では必ず「柔道整復療養費支給申請書」の右下「委任欄」に自分で署名することになっています。
患者の署名があるからこそ、患者に代わって接骨院が健康保険からお金を受け取ることができます。
療養費申請書には、どんなケガでどんな治療を何日したのかが記載されています。
中には治療内容を患者に見せないように隠して署名させる接骨院もありますが、負傷名、日数、金額などをよく確認してから署名しましょう。

領収書をもらおう

診療の内容や金額を確認するためにも、領収書を必ずもらいましょう。
接骨院は無償で領収書を発行することが義務づけられています。
領収書は医療費控除を受ける際にも必要になりますので、大切に保管しましょう。

治療が長引く場合は、医師の診断を受けよう

慢性化・症状が固定化したケガは健康保険が使えません。
「ここからが慢性化」という期間は設定されていませんが、接骨院は3カ月を超えて治療を続ける場合、長引いている特別な理由を申請書に添えなくてはいけないことになっています。
普通のケガなら3カ月もあれば治りますし、厚労省も長期施術の目安を「3カ月を超える」としています。
治療が長期に渡る場合、内科的要因も考えられます。
治療方針が間違っている可能性もあるため、治療が長引いている場合はきちんと医療機関に受診することをおすすめします。

 

それでも不正が疑われる接骨院に対しては、しかるべき機関に通報するという最終手段があります。

不正接骨院、通報先はどこ?

代表的な通報先は①保険者、②施術団体、③都道府県、④地方厚生局です。
ただし①保険者には接骨院に対する指導権限がないため、ダメージを与えるような処分ができません。
②の施術団体も接骨院が自由意志で加入しているため、指導があったとしても大きな効果は期待できないでしょう。
③都道府県、④地方厚生局に通報される方が、接骨院にとってはよっぽど恐いです。

保険者(効果:小)に通報する

あなたが加入している保険者に情報提供する方法です。
保険証を見てみてください。下の方に○○健康保険と記載されていると思います。
連絡先は、保険証の下の方に記載があればいいですが、ない場合はインターネット等で調べる必要があります。
前述したとおり、保険者には接骨院に対する指導権限がないため、患者から通報があったとしても、都道府県と地方厚生局に情報を流すことしかできません。
患者一人からの通報だけだと、証拠がないという理由で、話を聞いておしまいになる可能性もあります。
保険者ができることは、怪しいと思われる接骨院に通院している患者に対して「この通院内容で合ってますか?」と照会文を送付することです。
複数の患者から「この施術所が怪しい」と通報があれば、保険者も照会文書で証拠を集めて、疑わしいとなれば都道府県と厚生局に情報提供することができます。
ただし、やはり指導権限がないというのがネックなので、通報するなら都道府県、地方厚生局の方が効果的です。

施術団体に通報する(効果:小~中)

施術団体とは、接骨院が任意で加入している団体です。
公益社団法人○○県柔道整復師会といった法人、○○柔整師協会、○○株式会社など種類はさまざま。
施術団体は草野球チームみたいなもので、接骨院に対して強制的な権限は持っていません。
施術団体が持っている力は、その施術団体によりけりです。
接骨院がその団体から大きな援助を受けていれば指導に従うでしょうし、どうでもいいと思っていたら施術団体を代えてお終いです。
施術団体は接骨院に直接聞くか、毎月署名をしているはずの「柔道整復療養費申請書」の振込先に記載されているのでそれで分かります。

都道府県、地方厚生局(効果:大)

都道府県と地方厚生局は接骨院に対して強い権限を持っています。
「不正をした場合認定を取り消す」と協定・契約の中で認めた上で、接骨院は認定を貰っています。
接骨院と協定・契約を結んでいる当事者である「都道府県」「地方厚生局」なら、「約束が違うよね?」と強く出ることができます。
また、患者からの直接の情報、3000以上ある保険者から不正接骨院の情報が全て集まるのも都道府県と地方厚生局。
集まった情報の中から、怪しい接骨院を見つけ出し、この二つの機関が共同で個別指導・監査を行います。
この指導・監査の中で不正が確認された場合、接骨院の認定は取り消されます。
認定を取り消された接骨院は5年間復活することができず、また不正に受給した療養費を返還しなくてはならなくなります。
このように強い権限を持っているため、間違いなく不正をしているといった場合は、都道府県と地方厚生局に通報するのがいいでしょう。
ちなみに東京都の場合の通報先は
東京都福祉保険局指導三課:03-5320-4074
関東信越厚生局東京事務所:03-6692-5119

その他の都道府県の場合、地方厚生局ならこちらで管轄が調べられます。
都道府県の場合、指導担当部署が分かりにくいため、都道府県ホームページから代表電話にかけて、担当に繋いでもらいましょう。

ただ、都道府県によっては「うちは地方厚生局がやると行った場合しか、指導監査はできません」というスタンスの場合もあるようなので、
通報の効果にランクをつけるとすれば、都道府県が中~大、地方厚生局が大となります。
持ってる力のイメージは、
保険者、施術団体 <<<(超えられない壁)<<< 都道府県 < 地方厚生局
といったイメージです。

不正が疑われる、やりたい放題の接骨院に対しては
「施術所名・施術者名を出して厚生局に確認しますけど、大丈夫ですか?」
といえば、接骨院に釘を刺せるでしょう。

 

柔道整復、はり・きゅう、あんまマッサージは古来から伝わる日本独自の治療です。
そのため科学的に根拠が認められている整形外科と比べて、治療効果が疑問であるという声もあります。
しかし整形外科の治療で効果がなかった人が、これらの治療で効果が出たというケースもあるので一概に否定することもできません。
そのため日本の健康保険制度では、一定の条件の元健康保険の利用を認めているのです。
にもかかわらず、その一定の条件ですら無視して国民共有の財産で私腹を肥やす接骨院が後を絶ちません。
患者が健康保険の正しい使い方を理解することも重要です。
日本の国民皆保険制度を守るためにも、一人一人が正しく受診することを心がけましょう。